「シミュレーション」と「シュミレーション」では
どちらが正しいのか?わからなくなることってないでしょうか?
模擬的な実験を指し示す言葉として使われているのが「シミュレーション」や「シュミレーション」です。
両者の言葉には意味の違いはありません。しかし、正確な発音には違いがあります。
英語のスペルは “simulation” です。それをカタカナ表記にすると “シミュレーション” となります。したがって、カタカナで正確な発音は “シミュレーション” であり、”シュミレーション” は誤りです。
日本人の発音のクセ
多くの日本人は “シュミレーション” と発音しているのではないでしょうか?
これは “シミュ” という音が、多くの日本人にとって馴染みが薄く、発音が難しいためです。
他の言葉でも同じことが起こっています。例えば、”コミュニケーション” はどうでしょうか?英語のスペルは「
communication」です。これをカタカナ表記にすると”コミュニケーション”が正しいのですが “コミニケーション” と発音されることがあり、実際にそのような発音であっても日本人同士であれば相手に十分に通じます。
このように”ミュ” の音だけをとっても日本語を話す私たち日本人にとって発音が難しいことなのですが、それが “シミュ” になると、さらに発音が難しく感じられ、”シミュレーション” は非常に発音が難しい言葉となってしまうのです。
一方で、”シュ” という発音は日本語で一般的で、たとえば “首位、趣味、主人” のような普段よく使うような単語で見られる音と同じです。そのため、自然と “シミュ” が “シュミ” に変換され、”シュミレーション” といった発音が広まったのではないでしょうか。
一部の人は “コミニケーション” のように “シミレーション” と発音することもあります。
音位転換
音の位置を入れ替える現象を「音位転換」や「音位転倒」といい、発音をしやすくするために生まれました。
この現象は多くの日本語で見られます。
「音位転換」や「音位転倒」の事例
表記されている漢字から何も考えずに出てきた言葉を声に出してみるとわかりやすいですよ。
漢字表記 | 本来の読み方 | 音位転換 |
雰囲気 | ふんいき | ふいんき |
玉蜀黍 | とうもろこし | とうもころし |
新しい | あたらしい | あらたしい |
秋葉原 | あきばはら | あきははら |
誤って音位転換された言葉が、正しいものとして広く受け入れられている言葉になっているものもあります。
まとめ
今回の記事では「シミュレーション」と「シュミレーション」という模擬実験を指す言葉でどちらの発音が正しいのかを解説してきました。
どちらも意味は同じですが、発音に違いがあります。正確なカタカナ表記は「シミュレーション」で、これが英語の “simulation” に対応します。しかし、多くの人が「シュミレーション」と発音し、これは「シミュ」の発音が日本語話者にとって難しいためです。
このような音の位置の入れ替わりは他の日本語でも起こっていて「音位転換」と呼びます。その結果、一部の誤った発音が正式なものとして受け入れられて新たな日本語として定着しているものもあります。
読みにくい、発音しにくい言葉を自分たちの都合のいいように、使いやすいように変えてします。ある意味で日本語の特徴的な部分ではないでしょうか。
普段何気なく使っている言葉の中に、実は様々な背景があることがわかってきます。